実現のための技術的手段

図5 ネイチャーインタフェイスのキーデバイス

 情報通信機器の体積・重量は本質的にはゼロであるべきで、この究極の目的値に向けたマイクロシスム技術が電気、機械、物理、化学の各方面から開発されており、今後もその努力が続いていきます。
 また、コンピュータを人間が操作する従来の路線が続く一方で、これを無人で働かせるといういわばパーベイシブコンピュータ(PervasiveComputer)の世界が拓かれつつあります。さらにインターネットはバージョン6(IP. Ver 6)に進化して地球上のあらゆるデバイスをネットワークに接続して識別できる時代を迎えました。また近距離無線通信のためのデバイスは1チップにまでマイクロ化する勢いです。技術の歴史を富士山によって図6のように表しました。
 このような二つの潮流、すなわちマイクロ化とパーベイシブ化の技術により構成される情報マイクロシステム技術によって、自然・人間・人工物間のインタフェイスを高度化する技術が実現できます。これは要約すると近年のマイクロマシン技術、マイクロセンサ技術、ウェアラブルコンピュータ技術、無線技術、インターネット技術の融合によって可能となってきました。
 このような新しい端末の概念を「ネイチャーインタフェイサ」と称します(図5)。この微小デバイスを野生動物、人間、動く人工物体に装着し、刻々の状態検出情報を認識処理し、ワイヤレスによる制御、および診断を行うことが現実味を帯びてきました。

図6 技術の富士山

これは各種の情報をセンサでとらえて、腕時計サイズのコンピュータで認識処理し、無線で発信するデバイスです。このときのキーとなる技術は、センサでとらえた入力情報を意味のある情報か否かを判断して、その採取を続けるかスリープモードに入るかというソフト的技術とハード構成技術の両輪によって、消費エネルギーを最小にする技術です。このような技術の先達は腕時計にあります。
 このような技術によって、地球上を動き廻る動物の位置と化学物質の同時検出が可能になり、それはまた地球環境情報の検知へとつながり、環境保全への応用や、歯車や回転軸など運動する人工物の劣化状態を検知することで大事故を未然に防止するなどの応用が可能となります。このようにネイチャーインタフェイサという情報端末が微小化すればするほど、応用範囲は飛行機から小鳥までと広がってゆくことが期待されます。

図7 ネイチャーインタフェイスの世界

 今後、コンピュータ通信社会はますます高度化しますが、これを人間の快適さ、便利さのみへの道具とするのではなく、より広い生活環境に応用することが、21 世紀の高齢化や環境破壊への対策として焦眉の急となってきています。近未来にこのようなネイチャーインタフェイスの世界は実現することでしょう。図7 はその概念図です。

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