| 基盤技術開発グループ
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海馬計測システム プロジェクト
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<プロジェクト代表者>
神奈川歯科大学 歯学部 教授 小野塚 実
(1)プロジェクトの概要
本プロジェクトでは写真の「間違い探しゲーム」にウェアラブルの眼球センサーを組み合わせることで、脳の海馬の活性度を計測するシステム「海馬機能計測システム」を開発している。
脳の海馬の活性度と機能の低下は、空間認知能力、記憶力などに影響を与えると考えられており、写真の間違い探し問題の正答率は、被験者の空間認知能力、こころの動き(情動)などによって異なってくることが確認されている。

本プロジェクトでは、被験者の正誤判定の知的能力だけでなく、ウェアラブルの光学センサー(注視点測定装置)で取得できる眼球運動、および、それをもとにした写真上の注視点の軌跡を分析の対象とし、それをもとに指標化することを目指している。指標値と被験者の年齢、生活環境などについて海馬の活性度の相関を見つけ、指標値をもとに海馬の活性度を推定できること、およびその精度がどのくらいなのかを明らかにすることが期待されている。
指標値の有効性については、指標値の高い被験者、低い被験者を、Functional MRI装置を用いて、海馬の血流量と活性度を検査することで検証する予定である。

(2)プロジェクトの活動内容
「間違い探しゲーム」をコンピューターシステム上にインプリメントし、注視点計測装置と組み合わせた海馬機能計測システムを開発した。海馬機能計測システムは下記の機能を有する。
- 高齢者でもリラックスして検査を受けられる「間違い探しゲーム」の機能
- 被験者の目の動きと画面上の注視点の軌跡の取得
- 正答率、反応時間、注視点データの指標化とデータベース化
- 正答率、回答内容に応じた、推論ルールによる被験者の評価機能
- 指標値の低い被験者に対するリハビリテーション手順の提案機能
システムの開発は、10月半ばにほぼ完了した。
実験内容
提示刺激データベースに蓄積された写真を実験プログラム(「間違い探しゲーム」)内で呼び出し設定をした.本システムは主に高齢者を対象としているため,必要以上に問題が難解になると短期記憶テスト本来の機能を半減させる恐れがある.よってそれを避けるため,提示写真にはそれぞれ「間違い探しポイント」として赤枠を表示した.これは赤枠内に変更箇所があることを示したもので,被験者にはこの赤枠内を集中的に記憶するよう教示を与えた.この赤枠は写真1場面に対し3箇所表示するが,実験プログラム(間違い探しゲーム)の流れの上では1つずつ赤枠が表示されるよう設定した.そのため提示写真としては1場面につき,赤枠のないもの及びそれぞれ1つずつ赤枠の表示されたものの計4枚の写真をデータベースに格納した.例として1場面用の写真セットを以下に示す.

1場面の写真セット
実験プログラム(間違い探しゲーム)では,写真提示の順を(a)→(b)→(a)→(c)→(a)→(d)とし,一度赤枠が消えてから次の赤枠が表示されるよう設定した.次に示す通り,変更箇所を設けた想起用写真も同じく4枚用意した.

被験者は記銘用写真の提示が総て終了した後,順に提示される想起用写真について記憶を頼りに記銘用写真との相違の有無を回答する.
(3)今後の展開
岐阜県内の老人福祉施設の入居者の協力を得て、60歳以上の被験者に対する実験を開始した。11月末までに50名分程度のデータを得られる見込みである。また、一部の被験者には、さらに協力して頂き、Functional MRI装置にて海馬の活性度を測定し、システムの性能の検証を行う。
本プロジェクトはIPAのソフトウェア開発のプロジェクトとして実施しているが、プロジェクトが終了する11月以降も、引き続き高齢者のデータの収集と分析を続ける予定である。3年程度、継続的にデータを収集することで、痴呆の前段階である前痴呆と海馬の活性度の関連性を明らかに出来ると期待されている。このため、来年度以降も、高齢者のデータを継続的に収集、分析することで、本システムが前痴呆の発見に役立つことを検証出来る。
ハードウェアに関しては、ディスプレイと注視点計測装置を一体化させたゴーグルタイプの提示装置の開発に取り組むなど、改良の方向性が考えられる。画像提示と注視点の測定をより簡便にできるウェアラブル機器を新規に開発することも期待したい。